Harmonia をクリアして(終えて)

harmonia-clear Harmonia は Key 15 周年作品。9月23日から Steam で 英語版(English Edition)が発売された。$9.99 (989円)だが、現在は20%割引の784円で買える。この土日を使って一通り終えたので、自分のためのレビュー記録として残す。
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 Harmonia の物語は近未来の地球という設定。世界の人口は 100 億人に到達したが、大規模な戦争により、世界は崩壊、人口も減少。大気汚染により、空は灰色、大地は剥き出し、水も干上がる。それでも、人類は生きのこっている。そのころ、フィロイド(Phiroid)と呼ばれるロボットが造られた。フィロイドは人間のように感情を持ち、人間の新たなパートナーとなるよう造り出されていた

 そんな荒廃した世界の、ある廃工場(decayed factory)で少年が目覚める。汚い天井を見上げると、自分の右手は機械だった。人間のようになりたい、感情を持ちたいと願い、廃工場を出る。しかし、どれだけ歩いても生き物がいない荒廃した世界。そして、力尽き、意識は途絶える。

 ――気が付くと、また天井のある部屋だが、懐かしい感じの歌声が越える。教会の中で、Shiona と名乗る少女と出会う。彼は人間である彼女のようになりたいと、感情を覚え始める。

 これが、この物語の導入部だ。物語は9つの章と、エピローグで構成されている。

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 まず「クリア」して、という表現だが、正確にはクリアではない。なぜなら、ゲームではないからだ。Harmonia のシステムは、よくあるテキスト ADV (アドベンチャー・ゲーム)風のシステム。過去ログの参照や、保存、読み込み機能などの機能がある。しかし、ADV との決定的な違いは、ストーリーに分岐がない。ADV でいうところの物語の分岐やフラグなどはない。ただただ、物語を進めるだけ。

 保存・読み込み機能の役割は、事実上の「栞」の役割。クリア後にイラストギャラリー機能が使えるようになるが、主要なイラストのみ。経ち絵部分は閲覧できないので、気に入ったシーンがあれば躊躇無く

 Steam で販売されていることから、もしかしたらゲームかと思う方もいるかもしれない。それに Harmonia のサイトでは「Key 15th Anniversary GAME」とある。だが、Steam で販売されている英語版のページでは「Key’s 15th anniversary Kinetic Novel」、日本語でキネティック・ノベルとある。物語を楽しむためのシステムといった。位置付けなのだろう。

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 「英語版」なので、当たり前だがゲームのシステムやテキスト文字は英語。しかしながら、登場人物の主要キャラクターの声(主人公を除く)は日本語音声。そのため、普段とは違う奇妙な感覚だった。海外の映画を日本語字幕で読むのとは真逆の作業。Harmonia では、テキストの英語を読みながら日本語に翻訳。一方の音声シーンは、日本語で聞いて、英語のテキストで改めて内容を確認する。

 なお、テキストは辞書を片手に読み進めるのが通常のスタイル。作品の冒頭部分は普段会話では使わないであろう難しい表現が多く、辞書を調べるのが多かった。でも章を読み進めるうちに、通常の会話が多くなり、辞書の出番も減ってきた気がする。

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 物語の印象。5章までは「やさしい世界」と表現したらよいのか。主人公が人間らしい感情を覚えていく流れ。物語の進行は淡々としているものの、所どころ不思議な表現が出てくる。とくにティピィ(Tipi)関連。なぜ、図書館の本が、、、や、なぜ彼女は一人なのか。この答えは、物語の後半で明かされる。

 6章以降は物語が大きく動く。そして、ここでも様々な違和感を覚えた。それが、物語の核心に触れているからだ。というのはクリア後の今だから分かる。

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 Harmonia は、すごく今時で現実的なテーマを扱っている気がする。

 ロボットと人間の関係や、心のあり方というテーマ。

 これだけの設定であれば、昔からある。古くは、映画のブレードランナー(1982年)。ターミネーター(1985年)は、ちょっと違うかな? 攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL(1995年)という作品があげられるだろう。最近の作品であれば、コミックであれば「 AI の遺電子」(山田胡瓜・作)、アニメであればプラスティック・メモリーズ(2015年)が近いような設定だ。

 これらの作品と Harmonia の違いは何かを考えて見ると、過去の作品群が「空想科学」だったのに対して、Harmonia の場合は想像に科学という現実が追いつき、もしかしたら本当に実現しそうな今の空気感をうまく表している。

 そして、救われない人間。救われない世の中。

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 色の表現が面白かった。人間の感情を色で表している。幸せはオレンジ。怒りは赤。さみしさは蒼、のように。そして、全編を通して、作品世界はモノトーンで暗い。これは最後まで続く。

 8章で物語は終わる。

 その後、エピローグが入っている。エピローグが始まったときは、蛇足に感じていた。物語は終わったのだから、あとは読者の想像に任せるべきではと。しかし、エピローグが終わると、その考えを改めざるを得なかった。この結末を提示したかったから、敢えてあのような演出をしていたのだろうと、今では想像している。

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 幸せってなんだろうか、と、つい考えたくなる。そんな作品だった。

 この作品で言うところの powapowa(ぽわぽわ)した気分になった。

 今、この時代に、この作品に出会えてよかった。

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Harmonia|Key Official HomePage
http://key.visualarts.gr.jp/harmonia/

 

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